図書館文化史 第2課題
<第1設題 アメリカにおける公共図書館誕生と発展についてその要因を論じなさい>
はじめに
アメリカの図書館の歴史は近代期に始まる。1730年代に会員制図書館が創設されてからアメリカ最初の大規模公共図書館の設立、その後の公共図書館の発展とその要因についてまとめる。
①ソーシャル・ライブラリーの設立
1731年、フィラデルフィアの職人たちの討論クラブ「ジャントー」の会員たちが、知識の獲得や学芸の促進のために会員制図書館「フィラデルフィア図書館会社」を創設した。以降、各地で会員制図書館が設立された。職工図書館、徒弟図書館、商事図書館、婦人会が運営する図書館などには小説も含まれており、利用者に娯楽を提供した。このような図書館を「ソーシャル・ライブラリー」と呼ぶ。
②ボストン公共図書館
マサチューセッツ州教育委員会初代委員長マンは、教育が人間の善なる部分を引き出すとして義務教育を開始した。そして義務教育を受けた子供が学校を卒業した後も生涯にわたって無料で勉強ができる場が必要だと考えた。この考えがアメリカ公共図書館の基礎となった。
1848年、マサチューセッツ州で世界初の図書館法が成立し、1854年にアメリカ初の大規模公共図書館「ボストン公共図書館」が開館した。無料・公費による運営・すべての人への公開という近代公共図書館の理念が初めて具現化された。ボストン公共図書館は、市の有力者の事業利益に仕える労働者階級に公共図書館で教育を受けさせて、労働の質と効率を上げること、公共図書館で利用者の読書嗜好をコントロールして体制派に従順な市民をつくり出すというねらいがあった。
③ALAの成立
ボストン公共図書館を皮切りに、全米に公共図書館の開設が始まった。図書館と図書館員数が増え、専門職団体「アメリカ図書館協会(ALA)」が発足した。ALAの設立により、図書館員の交流が深まり、専門職集団の結束を強めた。
④カーネギー図書館
鉄鋼業で巨万の富を築いたカーネギーは、1890年から1917年の間に公共図書館の建設を目的として多額の寄付をした。カーネギーは、社会還元と労働者の質の向上を期待して公共図書館の建設事業に取り組んだ。無料の図書館こそが自学自習の場であり、機会均等を保障するとの考えからである。カーネギー図書館は1679館にのぼった。
カーネギー図書館は開架式を導入し、図書館員は貸出サービスを行うようになった。
⑤女性図書館員の活躍
図書館の利用者の増加に伴い、図書館員の不足に陥った。コロンビア大学のデューイは意欲のある女性に図書館業務を教育し、資格を取得した女性は図書館の発展に貢献した。未開拓の土地へ図書を届けたり、児童サービスとして児童の読書の機会を与えたりした。
⑥「図書館の権利宣言」
第二次世界大戦前後、デモイン公共図書館は、特定の本=思想を排除する検閲は民主主義の根底を覆すとして断固とした対抗姿勢を取り、「図書館の権利宣言」を採択した。また1961年に改訂し、図書館が特定の利用者(人種・宗教・出生国・政治的な見解)を排除しないことを確認した。
おわりに
ボストン公共図書館の設立、カーネギーの図書館への寄付により、アメリカの公共図書館は発展した。労働者階級に教育を受けさせるという有力者たちの考えが図書館建設を支えた。また、女性図書館員の活躍により、辺境に住む人や児童に図書を提供することができた。検閲や差別を排除し、民主主義を支える機関として確実に機能している。
参考文献:「図書館概論 四訂版」塩見昇編著 日本図書館協会 2016年
2017年4月提出、7月返却
<評価B>
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